森 拓実(じゃのみち)

阿多古和紙による海底のイメージ:明暗を識別+明暗・光の方向を識別
原始的な生命が見た海底の景色を想像し、二点組の作品とした。目の進化は四段階で説明され、最初に明暗を識別し、次に光の方向を認識、その後ぼんやりとものが見えるようになり、最終的に高解像度の視覚を得る。前半の二つのモチーフを並べることで、目の誕生と進化を表現した。第一段階では光受容体細胞が体表面に現れ、「明暗を識別」では光を全身で感じ、波に揺れる光の柔らかな明滅を表現。第二段階では光の一部を遮る色素が発生したとされ、「明暗・光の方向を識別」では、暖かい方向に向かって漂う感覚を表現した。第一段階は白黒の世界で、第二段階では色彩を得て海の青色を感じたと考え、それぞれの輝度と色合いを調整した。作品は、地元で生産される手漉き和紙(阿多古和紙)の質感から着想を得た。自然と人工物が重なる領域のような存在感を持ち、粗くて素朴な素材を、自分なりの文脈で讃えたいと考えた。
Material: 和紙、フォームボード、発光ダイオード
Size: 700 x 700 x 210 mm

森 拓実(じゃのみち)
Artist Statement
私は建築設計・デザインとアート制作・活動を行き来しながら暮らしています。建築的なデザインプロセスを自覚的に操作することで生まれるアート、アートから得られる霊感が導く建築デザイン、といった具合に、私のモチベーションや方法論は流動的に変化します。その結果として出力される世界観を楽しんでいます。2024年には、建築家でありグラフィックデザイナーの森美欧と共にデザインユニット「じゃのみち」を結成しました。私たちは建築デザイン、アート、音楽、サブカルチャーの知識をもとに、表現活動を展開しています。また、普遍性のある事象を深く考察しつつ、地元である静岡県浜松市をインスピレーションの源として活動しています。ユニット名の「じゃのみち」は、諺の「蛇の道は蛇」に由来しています。この言葉の意味「大きな蛇が通る道は、小さな蛇も知ることができる」が面白いと感じ、私たち自身を「小さな蛇」に見立てて名づけました。
Biography
森拓実 1988年生まれ、三重県育ち、静岡県在住。大学院で建築学を専攻し、米国設計事務所でインターンシップを経験。現在は建築設計事務所に勤務。2020年、建築模型を再構成した「狭小弍面接道勾配結合体(幼生群)」でMONSTER EXHIBITIONに入賞し、現代アートの世界に踏み入れる。2024年、森美欧とデザインユニット「じゃのみち」を結成し、インフラへの警鐘を鳴らす「インフラストラクチャ(見えがくれする7つの立方体)」で第2回ECA展ファイナリストに選出。地元浜松市でホスピタルアートの提供や、地域おこし協力隊員との合同個展を開催。2025年春には「じゃのみち展 気賀」(浜松市立細江図書館)の開催を予定。
Instagram: https://www.instagram.com/takumi.mori_jpn?igsh=NXF5ZzY2OGVjMDVr&utm_source=qr